建築熱環境シミュレーションソフト「ThermalOne(試用版)」を9月9日~9月12日に開催された日本建築学会大会(九州)での発表に合わせて公開しました。
–開発の背景・経緯–
我が国では、2050年カーボンニュートラルや、2030年度温室効果ガス46%排出削減の実現に向けた対策が求められています。特に建築物が含まれる業務・家庭部門は、我が国のエネルギー消費量の約3割を占めており、この分野における取組が急務となっています。
これから2030年、2050年に向けて、省エネルギー化や再生可能エネルギーの利用などのさらなる建築環境性能向上が求められる中、設計の早い段階で熱環境シミュレーションを用いて建物性能を予測し、事前に十分な対策を講じることが重要です。
こうした社会的な要請を踏まえ、これまで主に研究や一部の設計だけで使用していたシミュレーションツールに、実務者でも比較的簡単にシミュレーションが行えるようなユーザーインターフェース機能を付けて公開する運びとなりました。
–ThermalOneの機能・特徴–
ThermalOneは、世界中の多くのユーザーに利用されている建築3Dモデリングソフト「Rhinoceros」と「Grasshopper」上で建築モデルおよびシミュレーションに必要なデータをおおむね作成できます。その後、簡単な操作だけでシミュレーションの実行から結果の可視化まで行うことができます。
実際の計算を担う解析エンジン部分には、尾崎研究室で開発し長年研究に使用してきた実績のあるTHERB for HAMの計算モデルを用いています。これは、実際に建物の内外で起こっている熱や水分の移動等の現象そのものを物理的な視点で精緻に再現することに焦点を当てて作られているため、先進的な技術や住宅・ビルなど多様な建築にも柔軟に対応したシミュレーションが可能です。また、この計算モデルは特に湿気や結露等の水分に関わる解析が強みであるため、日本や東南アジア等の比較的高湿な地域をはじめ、今後、地球温暖化に伴い空気中の水分量が増加していくと想定される中で、重要な役割を果たすと期待されています。
–今後の展望—
今回公開したのは試用版であるため、今後ユーザーからのフィードバックを収集しながら、機能の拡張と使いやすさの向上に取り組み、Standard版、Professional版、Premium版の公開を順次進めていきます。